お金とは何なのか その1

まずお金にはなぜ価値があるのかというのを考察してみます。そのためにまずは通貨(お金)の歴史について記していきたいと思います。昔のお金の多くは貴金属、つまり金や銀で製造されていました。古来より金や銀は貴金属であり、価値のあるものとされてきました。したがって当時の人々はお金自体に価値があったので、貨幣を安心して使用する事ができました。

 

しかし、貴金属を使用した貨幣にもいくつか問題がありました。政府の保有する貴金属の量とお金の量は密接に関係していた事から状況次第では貴金属の量が足りなくなり貨幣を製造する事ができなくなりました。たとえばローマ帝国で使用されていたデナリウス銀貨は時がたつにつれ銀の含有量は減り、その価値も下落しました。

 

また貴金属でできたお金は淵を削り取られたり、またはそっくりに作られた偽造通貨が製造される事によってその信用度は下がりました。これら変造あるいは偽造された通貨の額面は同じですが、人々はこれらの粗悪な通貨を嫌う傾向がありました。政府は法を制定する事により通貨を傷つける行為を禁止し、また偽造通貨の製造に対し極刑で臨む事でこれrらの行為を抑制しました。

 

また大規模な取引が行われる際には多くの貨幣が必要となりましたが、これにはとてつもない労力が必要となりました。

 

中国の唐ではこれらの面倒事を避けるためにその価値と同額の証券を発行し、この証券と引きかえに貨幣を受け取る事が可能としました。これが一番最初の紙幣と考えられています。

 

この概念は13世紀にマルコポーロらのヨーロッパの旅行者によって持ち帰られ、長距離であっても多額のお金を容易に輸送する事ができるようになりました。また紙幣は貨幣に比べて発行が容易なために様々な偽造対策が取られました。たとえば宋で発行された紙幣は複雑なデザインと多くの種類のインクを使用する事により、偽造する事を難しくしました。

 

ヨーロッパにおける当初の紙幣は債権的な意味合いが強かったようで、一番先に導入したイギリスは紙幣を戦争の資金調達のために使用しました。戦争には貴金属の有無にかかわらず多額の資金が必要だったこともあり、政府は返還する事を条件に資金を調達すると代わりに額面の印刷された紙幣を渡しました。当初は受け取り人の名前と発行人の署名が必要とされましたが、譲渡には不便であったのか廃止されました。

 

当初、紙幣は地方銀行でも発行されていたようですが、そのうち、政府による中央銀行の概念が出来上がると紙幣は法律により政府しか発行できなくなりました。しかし、その代わりに紙幣の価値は政府が保証し、紙幣を貨幣と同様に法定通貨、つまりお金として流通する事が出来るようになりました。

 

19世紀に金本位制が成立すると、金と貨幣の価値が通貨に結びつけられる事となり紙幣は金と関連性を持つ事により価値が保証されました。日本の明治時代に発行された紙幣には兌換券と呼ばれる紙幣があり、この紙幣はそれぞれの額面に応じて金貨と交換できました。こうして通貨の価値は保証されました。

 

しかし、金と通貨を結び付けた事により非常時に通貨を発行する事が出来なくなったために金本位制は停止され、代わりに支払いのみを目的とする信用貨幣制度が導入されました。

 

信用貨幣とする事で政府は額面に書かれた価値と同じ価値の商品と交換する事ができるという事を保証する事で、通貨を貴金属の有無に関係なく発行する事ができるようになったのです。

 

しかし、信用貨幣にも悪い所はあり、信用貨幣は大量に発行されたりその間に価値を失うとインフレを進行させるリスクがつきまといます。一昔前のジンバブエドルが有名ですが、こうなると額面が高額であったとしても品物がなくなれば交換する手段が絶たれて信用を失い、為替レートも下がるのです。

 

導入当時のジンバブエドルは1ジンバブエドル=1.47アメリカドルだったそうです。しかし、このレートは実際の購買力を反映していなかったためにレートは下がり始め、その後、紙幣が大量に発行された事によりその価値は天文学的な価値にまで低下しました。